第35回:タロットリーディング「節制」
節制とは、古代ギリシア以来の西洋における重要な徳目の1つ。「枢要徳」(四元徳)の1つにも数えられる。
ギリシア語で節制を意味する「ソープロシュネー」は、「ソー」(健全な)と「プロシュネー」(思慮)の合成語であり、語義通りには、「思慮の健全さ」を意味する。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AF%80%E5%88%B6
今回のカードは「節制」です。
両版ともに「水に片足だけを入れた天使」が「手にしたカップ」の「中身を入れ替える/混ぜる」イラストになっています。
景色はシャーマン版は険しい山場、ライダー版は草の茂る水辺と丘と異なる部分があります。前者はどこか「修行」を思わせ、後者は「リラックスした瞑想状態」といったイメージが浮かびます。
景色に置ける共通点としては「日の出」のシーンである、ということでしょうか。ライダー版では灰色の夜明け前の空に見えます。シャーマン版では青空、さらに虹も出ています。
「天使」がカップ=感情を混ぜ合わせる/動かすということで、ささくれ立って荒れている感情・沈んで淀んだ感情を平定・中和する・中庸の方に向ける、といった印象があります。
また、天使が着ている服の胸には「△」(=三位一体?)が描かれています。それに立っている場所も水辺で、白でも黒でもない「グレー」の状態と言えます。これらから、この天使は(感情・精神といったものの)バランスを取る・清濁併せ呑む存在のように思えます。
ここから、「瞑想、安定・バランスを取る、慎重に思慮深く作業をする、どっちつかずの状態(を許容する)」という意味に感じます。
天使が杯を操作していますから、もしかしたら我々人間には触れられない、(あまりこういった言い回しは好きではないのですが)高次な領域での動き・流れ・営みも表しているかもしれません。
悪い方向だと、精神面で乱高下・沈み込むだとか、落ち着いていられない、白黒でないとならない。あるいはもっと大きな流れのサインとして、忙しい時期であるとか、荒れがちな環境になる、とかでしょうか。
健全な精神と健全な肉体はイコールではないですが、ここで現れるのはそのようなイメージなのでしょう。中庸で寛容な思慮(=思考)によって朝(=新しい世界、展開)を迎える、といった。
話は少しそれますが、節制のカードはトートタロットにおいては「技」と名前を変えています。
このカードは錬金術の様子を表しています。
錬金術は「不浄で無価値で無力である死んだ物を、貴重で活発で記述的な生ける物に変成する」営みです。異なるものを混ぜ合わせて、新しい価値を作り出すようなイメージですね。
節制のカードも技のカードも、異なるものを許容し、新しいステージへ向かうための第一歩を表しているのかもしれません。